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昔が見える参道のお店


 江戸時代に天満宮のお参りは「宰府参り(さいふまいり)」と云われて、“一生に一度はぜひ・・”の思いをこめて訪れる人々が、賑やかに参道を行き来していました。その昔をいまに偲ばせてくれるお店が参道にあるのです。

◆ 松屋
   西鉄太宰府駅から天満宮に向って右側、二軒目です。梅ヶ枝餅を焼く店とおみやげもの屋が並んでいますが、見上げますと一軒の家屋。しかも白壁、瓦葺きの古風な造りで、二階の戸袋には“松屋”と漆喰浮彫りが目に入ります。また店先右端の暖簾の奥には「喫茶“維新の庵”」の看板が掲げてあります。

 その昔、ここは旅の宿、旅篭(はたご)でした。しかも幕末の頃の主人、松屋孫兵衛は勤皇の心厚く、福岡や薩摩、長州の志士と広く交わっていました。
 京都清水寺成就院の月照上人は、安政の大獄の嫌疑をうけて京都から薩摩に逃れ、錦江湾に入水して不運な最後をとげましたが、その西下の途中、数日をここで過しました。安政5年(1858年)10月のことです。人目を避けながらの旅でしたが、主人孫兵衛は歓待につとめました。上人はこれに応えてお礼の和歌を達筆で贈りました。

 「言の葉の花をあるじに旅ねする この松かげを千代もわすれじ 月照」

 以来、この歌は代々、松屋の家宝として受け継がれています。

 また、慶応元年(1865年)2月から同3年(1867年)の大政奉還まで、尊王攘夷派の三条実美ら五卿が、天満宮の延寿王院に移されていました。いわゆる“五卿落ち”です。この間に西郷隆盛、坂本龍馬、高杉晋作、伊藤博文等の勤皇の志士が訪ねてきて、維新回天の密議をすすめたのですが、西郷隆盛が泊ったのがこの松屋です。

 喫茶“維新の庵”の奥には、いかにも由緒ある風情の苔の庭が続いていますが、そこに月照上人の歌碑が建っています。梅ヶ枝餅と抹茶のセットを楽しみながら昔に触れることができるお店なのです。


昔を遺す松屋

月照上人歌碑

苔の庭
◆ ギャラリー川野
   参道を上がった左側に、店巾一杯に石の階段を敷き詰めた店があります。階段の脇の壁には「古布、昔着物、お細工もの、ギャラリー川野」と浮き彫りにした小さいプレートがかけてあり、階段を登りガラス戸の入り口を入ると、奥深いフローアにはいろんな衣類がハンガーに架けられて整然と並んでいます。

 ところが入り口近くの床がガラス張りで、そこの足元には、石の連なった細長い溝を眺めることが出来ます。これが「天満宮の参道の水路跡」です。説明板を読んでみましょう。

 「江戸時代、この付近の参道は櫻の馬場とよばれていました。両側には現在のようなみやげもの屋はなく、天満宮の神職の屋敷などが建ち並び、櫻並木が続いていました。この石垣は参道と屋敷の間に流れていた水路の跡とみられ、参道はいまより広かったことがわかりました。

 造られた時代ははっきりしませんが、発掘調査から江戸時代後半頃(約150年前)には造られていたようで、天満宮を訪れた西郷隆盛や坂本龍馬もこの水路端を歩いていたかもしれません。

 なお水路の底にみえる瓦や茶碗の破片は、その後、水路を埋める際に一緒に埋められたものと考えられます」

 いま、毎日、たくさんな人々が行き交う賑やかな参道の傍らに、昔をこの目で確かめられる“本物”が遺されているのです。


階段のある店先

参道の水路跡
◆ 高島文房堂
   参道の左側、ギャラリー川野の上手にある書道用品の専門店で、いかにも落ち着いた店構えの老舗です。左手看板に「文房四寶」とありますが、「四寶」とは、筆、墨、硯、それに和紙、いずれも書道にはなくてはならないものです。店内にはこの四つの品々が並んでいます。また店頭の「筆 墨 硯」の書盤は書道家手島右卿先生の筆です。 
 とくに、先が開いた条幅用(掛け軸用)の筆が、大小さまざまにショウケースに下げ並べられており、大きいものは穂先30センチを超えて、40万円するものもあります。また半紙用の大筆、中筆、小筆にはいろいろな種類が揃っています。

 天満宮ご祭神の菅原道真公は、空海、小野道風とともに「書の三聖」と崇められています。たいへん書道に優れた方でした。いま宝物殿に展示されているご真筆の「五言絶句双幅」は、道真公が太宰府の配所で都を偲ばれるお心を鳥に託された“鳥点の筆法”で書かれています。

 離家三四月 落涙百千行 萬事皆如夢 時々仰彼蒼
   (家を離れて三四月 落つる涙は百千行 万事皆夢の如し 時々彼の蒼を仰ぐ)

 また天満宮では、お正月の書き初め会、3月には献書祭、8月には七夕揮ごう大会が行なわれ、それぞれに幼稚園児から小、中学生、高校生、一般の方々の数千点に及ぶ作品が献上されます。回廊にもその優秀作が展示されます。
 
 さらに9月には本殿裏にある筆塚で、使い終えた筆を供え納めて感謝し、併せて書道の上達を祈る「筆塚祭」が行なわれています。

 書道の品々をいろいろ取り揃えているこのお店は、遠い昔の書聖道真公を、いまに蘇えっていただくところなのかもしれませんね。

落ち着いた店先

筆や墨、硯のいろいろ

本殿裏の筆塚





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